真夏のオリオン感想

わたしは、戦争映画が苦手です。


物がどんどん 壊されて

血がどんどん 流されて

人がどんどん 死んでいき

涙がどんどん 流されて

あらゆるものが 破壊され

愛する人は帰ってこない…




戦った人も 戦わなかった人も

みんな傷つき

誰も救われない…


戦争に勝者はいません

戦争映画はマイナスの映像です。

そこにどんな、テーマや教訓があったとしても、

戦争映画は苦手です。


今でも、世界のどこかで小規模な戦争や紛争があります。

マスコミやネットで、人間同士の紛争や殺人を伝えない日はありません。

それも、殺人報道など、あまりにも詳しすぎる内容を連日伝えることもあります。

人間の悲しい、愚かな行動はなくならないのです。

だからもう、そんな怖い映像は日常のテレビの中で氾濫しているから十分と思ってしまいます。

はっきり言って、お金出して、観たい映像ではないのです。

現実に起こっていることのほうが、リアルで怖くて、

わたしたちで、どうにかしなければならないことなのです。




だから、玉木宏さんが戦争映画に主演すると聞いて、

不安な気持ちになりました。

玉木宏さんに会えるのは嬉しいけど、

作品自体は期待しないようにしました。




でも、一度は観ておこうと思い、行きました。





真夏のオリオン



    鈴木元水雷員回想

    「わたしたちはみんな一生懸命だった。ただ、それだけです。」



魚雷戦シーン…



    イー77潜水艦

    倉本艦長「最大潜速、取り舵いっぱい!」

          「いちばん、ふたばん、魚雷発射用意!」

          「いちばん、ふたばん、てー!」
      
          (「てー」は「撃てー」のことでした。ww)



倉本艦長が命令を下すと、担当部所がすかさず復唱し、実行します。

魚雷を発射させると、敵駆逐艦の爆雷を

潜行させながら避け

敵潜水艦を沈めますが、

粛々と冷静に実行していて、

機関銃ダダダッや血しぶきがなくても、逆に冷静な分、

戦争の無情さがリアルに出ている。

やらなっかたら、こちらがやられるんですから…

怖いです。

    



気がつくと、息を止めて観ていました。

緊迫しているけど、静かな映画で、

指令を出すときも、怒鳴るのでなく的確に響く声で指示します。


敵艦の爆雷が接触する場面、潜水艦内は大揺れに揺れ、

艦内あちこちで、海水が噴出し、みんな総出で穴をふさぎます。

処置が一段落して、



    倉本艦長「鈴木一等水兵!」

     艦長は、鈴木がポケットから落とした
ハーモニカを差し出します。

「今度、聞かせてくれ。」

艦長、微かな笑顔。


     鈴木水雷員「はい!」



息が継げる、ほっとした場面でした。


本当は、潜水艦の中に音の出るハーモニカなど、持ち込み禁止なんですね。

しかし、怒ることもなく、その場が和むようなことを言う。

実在のモデルになった艦長さんも、怒るのを艦長付の水兵さんは見たことがないそうです。

潜水艦内は密閉された場所で、艦長の言動一つで、艦内の空気が変わるので、

艦長は常に平常心で穏やかにいなければ、ならなかったそうです。





    イー81潜水艦

    有沢艦長

      「最初の爆雷をかわせば、相手のソナーは使えない。」

      「右の探知不能領域に突っ込む!」


     山下水測員

      「艦長!爆雷が来ません!」

      「探知不能領域、広がりません!」
      

    



途中から、涙が止まらなくなりました。。






    中津航海長

      「艦長!艦隊司令部から、定時連絡が入りました。」

        航海長、倉本艦長に電文を渡す。

           
       「なお、他の4艦からの連絡がすべて途絶えました。」


      イー49潜 イー64潜 イー62潜 イー81潜…


           



周りから、すすり泣きの声





    艦内、全員押し黙ったままです。



    倉本艦長「鈴木、これ吹けるか?」

     ズボンのポケットから、志津子に貰った楽譜を取り出します。


     ハーモニカの音色が艦内を満たしていきます。







持っていたハンドタオルも、ぐっしょり…





     小島水測員「金属音…断続的に…」

     倉本艦長 「深さは?」

     小島水測員「深さ…およそ110…」

     倉本艦長 「深いな…」

            「モールスだ!」



    有沢回想
       有沢「いいなあ、お前は。
           お前みたいなやつが生き残っていれば、
           この国は大丈夫だよ。」

       倉沢「このトマト 美味しいな…」


        …………


       有沢「ひとつ約束しろ。俺より先に死ぬな!
           ちゃんと、約束しろ!」

       倉沢「そんな 恐い顔するな。」


       

       



鼻水が垂れてきても、しゅめません


その後も、駆逐艦との息詰まる攻防…


映画館の中のはずが、イー77の中にいて


二酸化炭素濃度の濃いい空気を吸っているような、

息苦しい気分になり、





化粧は流れ去り…




『願い星』の歌とエンドロールが流れる頃に、


やっと、空気が美味しく感じられるようになりました。




期待していなかったので、

いつものように

コーラとポップコーンを買いましたが

ほとんど飲まず、食べずじまいで、

氷は溶け、

ポップコーンは持って帰って次の日に食べたので、


湿気てました。











わたしが、戦争映画を観たくないというのは、過去に日本が始めてしまった戦争から、目を背けて、平和な日本で安穏に暮らしていたいからではありません。

ただ、あまりにマイナスの映像を観るのは、いつも真面目に観るわたしにとっては、辛い悲しい作業なんです。

生まれた時から、広島県に住んでいるので、小学生のころから、平和教育、平和報道にどっぷりつかってました。

学校には実際に原爆に遭われた先生がおられ、そのお話を直に聞いたり、社会見学や遠足に平和公園に行ったり…

夕方の地方ニュースは、広島なので、平和や戦争や原爆の話題を最優先に伝えていますし。


ほかの地域の平和教育が、どのようなものか分かりませんが、わたしが通った学校の先生がたは、8月が近づくと、授業そっちのけで、原爆の話や、戦争の話をされていたのを、よく覚えています。(授業がなくて嬉しかった為;)



そんな地域性もあって、小さい頃から、日常的に平和や戦争や原爆のことを、考える機会が多かったと思います。


それで、頭の悪いわたしながらに、

「なぜ、戦争をするのか?」

「なぜ、戦争を始めてしまうのか?」

「なぜ、人間どうし殺しあうのか?」

を、ずっと考えてきました。


それで、思ったのは、

思想、宗教、国益 

さまざまな言い訳はあるでしょうが、

どんな理由があろうと、

戦争は、絶対にしてはいけないということです。




真夏のオリオンの凄いところは、

戦争映画なのに、映像があまりに美しいところです。

紺碧の海を、駆逐艦が旋回していく場面や

オリオン輝く、夏の夜空。

そして、玉木宏さんの削ぎ落とされた美しさや

玉木宏さんと堂珍嘉邦の甘くて渋い声の抑揚。

こんな静かで、穏やかな戦争映画も珍しいです。




今までの戦争映画にはない、新しいタイプの戦争映画だと思いました。




やほーの映画評価で、

「俳優も映像も綺麗すぎて、こんなの戦争映画じゃない!」と酷評している文がありましたが、

まさに、これが(俳優も風景も美しい)制作側の意図したところだと思います。





わたしは、映画を観る前、ポスターなどのバックが、

「なんで、青い空が地球の形なんだろう?」と思っていました。



今までの戦争映画のほとんどは、残虐なところや、悲惨なところをさらして、『戦争は絶対にしたらいけない!』というメッセージを大体が発していました。



真夏のオリオンを観て思ったのは、『戦争は絶対したらいけない!』というメッセージは勿論ありますが、次の段階の『どうしたら、戦争を起こさないように出来るか?』という疑問にも答えていると思いました。(わたしだけ?そう思ったかも^^;)



それは、日本とアメリカの両方から描くことで、家族に対する思いは同じなんだと分かったし、

それぞれ祖国の家族の為に、ごく普通の人々が戦争をしていたということを、再認識させられました。



そして、晴れ渡った紺碧の海や、洋上から見上げる美しい星空の映像を、

何回も観ることで、『この雄大な地球で、なんか無意味な事をしている』と思いましたし、

『住んでいる国は違っても、同じ美しい地球の人間なんだ!』と思えることが出来ました。


住んでいる国や宗教や考え方の違いはあっても、

『同じ人間』という認識になれば、相手を傷つけたり出来るでしょうか?



パーシバルの艦長は、自分に憧れ艦船に乗っていた自分の弟を、

日本の回天という人間魚雷によって失い、

「彼らの海からは、この星は見えない。」と思っていましたが、


1枚の楽譜が、パーシバルの艦長の手に渡って、

その楽譜に込められた『オリオンよ、愛する人を導け』という思いが、

艦長の考えを変えることになったのです。


敵味方関係なく、家族や恋人への思いは同じで、

『日本人も同じ人間』なんだという、認識に立てたのではないかと思います。


その間、アメリカの駆逐艦パーシバルと日本の潜水艦イー77の

知力と体力の限りを尽くした攻防は続いていました。

そしてその中で、お互いを尊敬し、称え合う気持ちが芽生えて来ます…




『音楽を 人を尊敬してて、それが 自分に返ってくる』(by のだめカンタービレ#2)




お互いの国を、人間を認め、尊敬しあえば、

その国の人たちと戦争しようと思えるでしょうか?


地球はSオケのようなもの

いろんな音色を出す楽器を持った奏者の集まりです。

排他的、否定的になるのでなく、

自分達にとって、変わった音色や不完全な音色であっても

国を超えて人間として相互理解を深め、

補い合って、尊敬しあってこそ、

平和な地球の音楽が奏でられ

聴けるのではないでしょうか…






真夏のオリオンを観て

いろいろ、考えました。

それが、この映画の目的の

ひとつだったように

思えました。



考える機会を

与えてくれた

玉木宏さんに

感謝します。







もう一つ、

わたしは

この映画を観て、

イー77の倉本艦長のモデル(イー58潜水艦艦長 橋本以行)

になられた方が実在したと聞き、

日本人として、誇りに思いました。



それまでは、「かつての日本のリーダーはなんて酷い戦争を始めてしまったんでしょう。。」

と、第2次世界大戦は日本にとって、消えることのない汚点だと、情けなく思っていました。



しかし、終戦間近の

戦争を始めてしまって、もうどうしようもない状況になっても

まだ、諦めず、明日の日本を考えていた人がいたことに感動しました。

軍上層部でも、冷静に考えれる人は、敗戦濃厚なのが分かっていたと思います。

『一億玉砕』という物騒な考えが、まかり通っていた時代、

「ひとりでも欠けることなく生きて、日本に帰る」為に戦って、

日本に帰ってきたイー58潜水艦の橋本以行艦長は

『終戦になった後、日本をどう立て直すか』を考えていた人だと思いました。








わたしの勤め先の介護施設に

かわいい小柄なおばあちゃんが

火曜日と土曜日に通ってこられます。

今はもう亡くなられた御主人の話を

よく、聞かせてくださいます。


広島県一の成績で海軍兵学校へ入校され

成績優秀で卒業され、

潜水艦に乗っておられたそうです。


終戦後、

呉造船(IHI)で、

巨大タンカー建造に携わられたそうです。


お孫さんも

おじいさまに似て

同じような仕事をされているそうです…









最後に、

あらゆる戦争で亡くなられた人々の

御冥福を、

ここにお祈りします。














PS.

最後まで、

間遠く、ながーいわたしの勝手な感想を読んでくださり、

有り難う御座いました。

戦争映画の感想は難しいデス。


玉木宏さんが俳優として、

ますます進化しているのが観れて

感動しました。










この記事へのコメント

ヒロミ
2009年06月22日 21:33
りえさんの感想、胸に響きました。こころが暖かくなりました。ありがとう。

玉木君は作品をつくるたび、私たちに新しい
世界を広げてくれます。
玉木君にも「ありがとう」を言いたいと思います。

りえさん、実は『はじめまして』なんです。ひとつ前の記事から読ませていただいています。これからもよろしくおねがいしますね。
2009年06月22日 23:47
ヒロミさま
こんばんは~!^^はじめまして!^^こちらこそ、よろしくお願いします~!
コメをありがとうございました。

長い、取り止めのない文になってしまいました。読んで頂いて、こちらこそ有り難う御座いました。
玉木宏さんが、減量して臨んだ映画は、やはり凄かったです。映画自体は拍子抜けするほど静かなんですが、それに慣れてくると、戦争の怖さや悲しさ、その中に差し込む光などが、ひしひしと伝わって来て、大変良い映画だと思いました。削ぎ落とされた頬の玉木宏さんの演技も、凄くよかったですね。そして声も。
本当に、新しい役に挑戦する玉木宏さんは、凄いと思います。違う世界が観れて、考えさせられることだらけで、ついて行くのが大変です。
わたしも玉木宏さんに「ありがとう」って言いたいです。
れんこん
2009年06月23日 09:38
りえさま
とても深いメッセージに感動しました。
恥ずかしながら一回目の鑑賞のときはあまりに「予習」しすぎて予告の場面になると反応してしまい艦長をピンポイントで見すぎてあっという間に終わってしまいました。
一緒に行った小5の息子もわかっていたストーリーを自分だけよく理解していないことも判明・・・
2回目でようやく内容に身をゆだねることが出来、涙が出ました・・・
今日、もう一度観にいきます。(あと3回観る予定)
前回とは違う感じ方をするのではないかと期待しています。
私の両親も戦争を体験していますが地域によって戦争のとらえ方もさまざまですね。
母からは特に食べる苦労と焼夷弾や空襲の話を聞きました。
今、空を見渡して攻撃してくるものがない、堂々と太陽の下を歩けるそのありがたみを忘れないようにしたいです。

2009年06月23日 23:09
れんこんさま
こんばんは~^^コメをありがとうございました!
わたしは、初回は涙が止まらなかったんです。それで、いざブログに感想を書こうとしたら、まともな文にならないので、2回目はメモ片手に観たら、感動もなにもなかったです。そして、今日3回目を観に行きましたが、ハーモニカを吹く場面、うしろで携帯が鳴って「だいなし」になりました。でも、後は玉木宏さんや俳優さんたちの表情をじっくり観れて、また感動しました。みなさん、いい味出していますね。
わたしの祖母は呉空襲(7/1)で亡くなりました。家も焼け、母は18歳で父親もその前に亡くなっていたので、親戚を転々として、ずいぶん苦労したようです。お姑さんからも終戦後、平壌から長男をおぶい、命からがら逃げた話など聞きました。今の子供たちはそんな話を聞く機会もなく、平和な日本しか見えていないところもあり、真夏のオリオンを観てくれたらと思いました。
茶子
2009年06月28日 00:05
りえ様
ヨーロッパから次々と情報を送ってくださってる時に、遅ればせで失礼します。もしかして気づいて頂けないかも知れないな、と思いつつ
私もりえ様同様、玉木クンが出ていなければ、決して戦争映画は見ていなかったと思います。理由はりえ様と全く同じです。戦争映画の感想って本当に難しいですね。
義父が海軍にいた関係で、家族は広島の呉で生活をしていたそうです。ダンナさんは、終戦後こちら関西に引き上げて後生まれたそうですが。義姉たちは呉での生活をおぼろげながら覚えているようです。義父は晩年戦争の事はほとんど口にしませんでした。生と死をまざまざと見つめてきて、どこか達観したというか、そして、なぜ自分が生きて帰ったのか、という事も考え続けていたようでした。主人にはよくそういう事を話していたようです。生還したものも罪の意識に苛まれる、そんな残酷な戦争は二度とあってはならないのだと思います。ああ、やっぱり舌足らずですね。すみません。
2009年07月02日 11:52
茶子さま
おはようございます~!コメをありがとうございました。返信が遅くなって申し訳ありません。やっと帰ってきましたーと言うか、あっと言う間でした。
本当に、戦争の傷はいつまでも癒えないし、治らないのではないかと、他の国へ行っても感じました。それは、人々の心に、不必要な恐怖心や猜疑心や排他心という形で残っています。大陸は太古の昔から戦争が断続的に続いていたので、しかたないのかもしれませんが…
御主人の御家族が呉にいらしたのですか…呉には全国から来られていたと聞きます。うちの母方の祖父も島根県から来た技術者だったらしいです。全国から優秀な頭脳が集結して、戦争で使う艦船(大和など)や潜水艦を呉で製造していたんです。優れた人材を戦争で湯水のごとく使って、失って…「そんなことのために生まれてきたんじゃない」という歌がありますが、本当に、残酷で哀しいことですね。そんな戦争を、忘れないために、穏やかで諭すようなこの映画が観れたことはよかったと思います。

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    Excerpt:  2011年の1月現在見た感想です。  北川景子さんの清楚な美しさを改めて認識しました。  「LADY~最後の犯罪プロファイル~」で眉を脱色して、かなりキツイ性格の、我が道を行くヒロインを演じてる.. Weblog: Kanataのお部屋へようこそ racked: 2011-01-20 22:05